進化についての疑問

教科書には書かれていない、おもに
進化論歯の形態学的な点における疑問を挙げてみます。このような疑問は、今主流のラットやマウスのみを使って行う実験ではほとんど生まれてきません、を通り越してこのような疑問を理解できないようです。
 大学院生はここからアイディアを吸いあげ練って研究に生かすことを願っています。

進化について

 私が進化あるいは進化論において、誰も触れることなく盲点となっている疑問の最大のものは次の2てんです。
 1 進化は何によって担保されるのか?
 進化は超長期的な問題ですそれを保証するのは何なのでしょう。 例えば突然変異によって、あるいは自然淘汰などによって進化したとします。しかし、変異は日常的に起きています、また自然淘汰にしても環境はどんどん変わります。このような中で何千万年、何百万年もつづく進化は何によって保証されているのかという問題です。

 2 進化の定義
 しんかとは何かという問題です。進化という用語は高度化する、効率化する、改善されるなどなどの意味を持つようです。そして誰しも問題なく納得しているようです。しかし一方では「進化は退化である」なのという指摘もあります。これは「進化」あるいは「生物の進化」の意味(定義)が確立していないためと私は考えています。

これらの疑問を分析したのが、進化の項目の進化の定義と進化理論です。是非ご検討いただきご意見を頂ければ幸いです

歯の形態や歯の進化について


1 歯の進化史上歯の数(歯数)が減少することが確認されていますが、多生歯(何回も交換し沢山の歯が生えている)から二生歯(乳歯と永久歯)への納得のゆく移行形態が見つかっていません。
 例 魚類や両生類、爬虫類の歯数は多生歯性といって何回も生え替わり、しかも顎の上に多数の歯があります。一方多くの哺乳類の歯は交換が一回以内(二生歯性、一生歯性)、しかも動物の種類によって歯の数が決まっています。それを歯式で表します。
 歯の減少する過程(中間的過程)を示した論文はほとんどない。なぜか?急に多生歯性から急に二生歯性になるとは考えられません

   ウシガエルの上顎 小さな歯が上顎に沢山あります

   ミシシッピーワニ 沢山の大きさの違う歯がグループを作っています

  ヒトの上顎  永久歯は切歯2本犬歯1本小臼歯2本大臼歯3本とだいたい決まっています。 


2 
歯の形態の分化は臼歯だけか?
  
歯の形態分化理論はCopeに始まりOsbornそしてGreroryと引き継がれ完成した三結節歯説(Trituberucular theory)が今でも元になっています。しかしそこには切歯、犬歯などの形態進化の理論はありません。哺乳類の歯の種類は、切歯、犬歯、小(前)臼歯、(大)臼歯と区分されているのです。ところが切歯、犬歯についてはBolkという発生学者の説以外無いのです。

  Osbornによる臼歯進化の模式図 aからjに向かって進化する、しかしそれは臼歯だけなのか。
 


3 
歯の種類は骨と連動するのか?
  切歯は上顎の切歯骨(ヒトでは胎児期に分化し、上顎骨の一次口蓋として二次口蓋と癒合する 1の写真参照)の上に植立する歯という定義が流布しています。下顎の切歯はこれに対応する歯です。しかし下顎に切歯骨が無いのは何故でしょう。歯種と顎の関係はどのようなものなのでしょう。

4 
歯の形態理論は臼歯だけというのは2で示しました。しかも歯冠だけなのですこれでは片手落ちを通り越して不自然です
  Gregoryの三結節説の図を例を疑問2に示しました。臼歯の咬頭分化が示されています。しかし歯根はありません。歯根の分化や進化はどのようになっているのでしょうか。

  ゾウの一種マストドンの臼歯 沢山の咬頭と、咬頭に連動した歯根があります。 


5 
沢山の咬頭のある歯は三結節由来の学説で説明できません。
  ゾウのとイボイノシシの臼歯進化のGregoryの図を示しました。これらの歯は手前(近心と言います)から後ろ(遠心と言います)へ、そして脇の方へ(頬側と舌側と言います)増えていきます。これを無理に学説に当てはめているような印象です。同じ大きさの咬頭なのに遠心領域を距錐として纏めるのは苦しいを通り越して「こじつけ」の印象さえあります

  Gregoryによるイボイノシシの臼歯進化 主要3咬頭以の距錐(hy)や歯帯(cing)が主咬頭同様に大きい

 


6 
咬頭とは何でしょう。
  
無意識に咬頭という用語を使い、歯冠にある様々な突起や凹みをそれぞれ名前をつけていますが、この名称はCope 以来の学説に依拠するものです。この学説に疑問があることは以上の通りですから、その名称もまたどのような動物でも当てはめるには無理があります。同じ大きさなのに咬頭と呼べないケースは5で理解できると思います。

7 
歯科医学の歯の形態学の教科書には各歯種の形が詳しく記述されています。しかしその形態(浮彫像)の発生学的、進化学的な意味は多くのものが説明されていません。

 例えば、ある種のサルの犬歯にある溝を「○○○のためである」説明している本もあります。これでよいのでしょうか。

ブタオザルの上顎 犬歯の前に溝がある。

8 
歯の組織と歯の形はどのような関係があるのでしょうか。
  
歯の進化では、組織形態が論じられているのは少ないようです。また論じられていても歯の形態、歯数などとは連動して説明されていません。細胞、組織、器官、器官系、個体というのは違う原則で進化するのでしょうか。どこまで同じでどこまでが違うレベルなのでしょう。

  歯の原基(歯胚)の水平断 エナメル質を作る細胞群(エナメル芽細胞)があたかも星雲のような渦巻き構造が認められる。
 


9
歯の起源はサメの楯鱗なのでしょうか。
  
現在、歯の起源はサメの皮膚の鮫肌(楯鱗)だと言われています。歯によく似た構造のためです。皮膚がどのようにして口に入り込んでいったのでしょう。いっぽう、原始的な脊椎動物といわれる頭索類のナメクジウオには歯に当たる構造がありません。また脊索動物のヤツメウナギには角質の歯が口の周りに生えています。これが歯に進化したのではないという証拠はありません。

 
ヤツメウナギの角質歯 口の周囲に沢山の棘が整然と並んでいます。角質化した歯であるため新しい教科書では歯の先祖として扱われていません。

 
   マダラトビエイの歯 沢山の歯が口の周りに生え、その口腔側(口の中)には将来歯になる歯の形をした原器がこれまたたくさん鮫肌のように準備、配列されています。


10  
歯の世代、歯元列、歯族、歯列(Zahnreihe)などはあるのか
  
哺乳類以外の動物の歯は何回も生え変わる多生歯性である。これは、ある歯の継続する歯の原器が隣の歯の下に(つまり斜め下に)位置して分化するためこの一連の歯を歯列(Zahnreihe 注)、顎に並ぶ同じ世代の歯を歯元列(同世代歯)、ある歯とすぐ下にある隣の歯の原器(表面上の後継歯)の列を歯族と表現することがある。

注 Zahnreiheを直訳すると歯の列、歯列となる。歯列という用語は顎に生えている一連の歯の意味であり混乱する。それ故、同世代歯という用語を用いている。


   Romer(1977)によるEdmundの歯の説明
 斜めに並んでいるのがZahnreihe、実際は垂直方向に交換する。


12 
歯を作る細胞は集団で移動(運動)する。
  これはわずか直径数十ミクロンの歯を作る原器がヒトでも1cmもの歯になることから細胞が移動することは明らかなのですが、移動する運動するということは未だ十分に認められていません。
 
13 
歯を統一的に説明する理論がない。
  
上にも記述したように歯は脊椎動物、とくに哺乳類においては種類を決め、進化を説明する重要な体の器官です。しかし、これまで系統的、体系的な理論が生まれてきませんでした、それは何故なのでしょう?

このような疑問の数々を研究によって埋めてきました。その結果歯の形態形成には
Pond modelを提唱しました。
これで説明できると自負しています。
詳しく知りたい方はこちら「
解剖」または「」をご参照ください