ノモンハン 書評 そくほう 2009年12月号
ノモンハン戦争(岩波新書 田中克彦 819円)
ノモンハン事件(平凡社新書 小林英夫 798円)
ノモンハンの夏(文藝春秋 半藤利一 1470円)
大岡昇平が日露戦争の馬鹿さ加減を訴えたい本が日露戦争賛美となり、ノモンハン事件の重要人物辻正信の戦後も併せて振り返る必要があります。藤澤周平が石原完爾を故郷の偉人的な書き方をしていたのも気になります。こうした戦争前線の責任者のみではなく日本の中枢の問題も昭和史として反省したいとこのところ時間の許す範囲で勉強しています。
これを駆り立てるのは、一つには、我が子も社会人になったのに十分な日本史、世界史さえ高校時代に選択科目のため教わっていない、独学をしなければならない世代だからです。そうしてもう一つ、この度の「仕分け」にもあるように「現場を観ない」「反省しない(反省できない)」世情に不安を感じるためです。振り返れば自分のいる科学の世界でも、事実であるのに事実を隠し、あるいは反省を生かせないことがあまりにも溢れています。そして一方では少ない研究費と設備で奮闘して世界に伍する仕事をしているのもまた事実です。どうでしょう、日露戦争の装備でノモンハンを戦ったのと同様の現象があまりにも多いことに唖然とするのは私一人ではないと思います。 (東京支部 小澤幸重)